医療現場において良い人材の確保は最も重要です。なぜなら、医療サービスの基礎となるのはまず人材であり、その人材が集まって働くためのオペレーションや、それを患者さんに届ける仕組みが後から出来るからです。
人材の確保とは働く人を採用することだけではありません。採用した人を育成し、適切に評価し、配置や報酬を組織の目指す方向性と適合させ、採用した仲間が働き続けたいと思う場にすること全てを指します。
しかし、業務が多くミスが許されない医療現場において、そうした「人づくり」の時間、場、そしてモチベーションの確保は大変難しいと思います。また、講師には医療現場特有の「文化」も理解してもらわなければなりません。
当社は臨床現場で経験を積んだ講師(薬剤師、医学博士、経営学修士、MBTI認定ユーザー)により、医療現場が抱える組織の課題に向き合い、一緒に解決のお手伝いをしたいと考えています。
1.医療サービスにおける研修とは
一般的なサービス業について
一般的なサービス業について一般的にサービス業とは「問題や要望を抱えた顧客が、従業員、設備、他の顧客などと直接関わる経験を得ることで、問題が解決したり、要望が実現したりする取引可能なビジネス活動のこと」と定義されます。
サービス業の特徴
一般的なサービス業には次のような特徴があります。
- 無形性
- サービスは目に見える形がなく、触れることができない。購入前に試すことができない。
- 同時性
- 生産と消費が同時に行われる。したがって、サービス提供者と顧客が同じ時間に同じ空間にいる必要がある。
- 異質性
- サービスを提供する人、または同じ人でもサービスを提供する時や場所によって品質が異なる。
- 消滅性
- サービスは保管したりあらかじめ用意したりできない。そのため需要の変動に対応することが難しい。
そのため、サービス業は顧客が利用することで当たり前に得られる機能(本質機能)が確実に備わっていることが必要です。加えて、顧客が感動するプラスアルファの機能(表層機能)が無いと再び利用してくれたり、新しい顧客を連れてきたりすることはありません。したがって、顧客に対するプラスアルファの努力をすることが非常に重要です。
サービス業に人材育成が必要な理由
サービス業における表層機能を充実させるためには、顧客に接するスタッフ一人ひとりのスキルやモチベーションを向上させなければなりません。なぜなら、個別性の高い事柄それぞれにマニュアルやルールなどを作ることはほぼ不可能だからです。しかし、個々の対応は異なっても組織として共通の思いや理念を届ける必要があります。したがって、スタッフ教育には表面的なスキルだけではなく、組織が目指している戦略やビジョンを共有できるようデザインしていかなければなりません。
医療サービスの特徴とは
一般のサービス業の特徴に加えて、医療サービスでは以下の特徴があると言われています。
- 個別性
- サービス利用者の要望や状況は一律ではなく個体差が大きい。したがってその都度個別対応が必要である。
- 緊急性
- 疾患や状態により緊急性が異なる。また医学的な必要性、緊急性は患者の要望、不安と一致しないこともある。
- 地域性
- 医療機関は一部の専門病院を除いて地域性が高い。診療圏は生活圏であることが多い。
- 年中無休
- 年中無休で応需できる体制が必要であるので、施設、設備、人員配置も最大負荷時に対応できるように準備しておかなければならない。
- 侵襲性
- 医療行為は侵襲を加える行為である。薬剤投与は異物・劇物・毒物の投与であり、検査・処置・治療行為・手術は外的障害を伴う場合がある。
- 不確実性
- 不具合を持つ、また、多様かつ複雑な個別の反応を示す個体に対して侵襲を加えるということから医療の経過と結果は予測困難である。
- リスク性
- 医療はリスクと治療効果を勘案して選択することが特徴である。リスクは患者にとってもリスクだけではなく、医療を提供する側にとってのリスクでもある。
(病院のあり方に関する報告書2011年より抜粋)
医療研修の特徴とは
患者さんの満足度を上げるためには、医療行為という本質機能を一定の水準に満たしていくと共に、患者さんに対するホスピタリティを向上させたり、各現場で臨機応変な対応をしたりといった表層機能を向上させていくことが重要です。そのために必要なことは、患者さんに接する医療スタッフが働くことに対して満足感を持っていることが必要と言われています(従業員満足度の向上)。特に、近年の研究では金銭や休日などの物的な報酬より、「成長できた」とか「良い仲間と仕事ができている」という経験的な価値が従業員満足度向上に大きな影響を与えていると言われています。
したがって、医療における研修は単に知識や技術をインプットするだけではなく、それが成長につながっているような実感を伴うこと、良い仲間との時間の共有と思えることが大切です。ゆえに、医療人材の育成に対する投資は非常に重要であると考えられます。
2.なぜ、医療における研修は難しいのか?
これほど人材の育成が大切な医療において、なぜスタッフの研修が難しいのでしょうか。当社ではその理由を次のように考えています。
時間がない
医療業界は大変忙しい業界だということはよく知られています。しかし単に業務量が多いだけではなく、その働き方やマインドセットにも関係すると思います。
勤務中の研修はほとんど皆無
一般企業の場合、研修は業務時間内に行われることがほとんどです。しかし、医療業界において勤務中の研修は非常に稀で、多くの場合業務後か休日に行われます。また、研修は自己研鑽に含められ、職場からの支援も十分ではないことが多いため、学びたい人にとっては厳しい環境といえます。
勤務体系が複雑
医療従事者の働き方は特殊です。朝早くから夜遅くまで勤務されている方が大変多いことに加え、多くの施設では休日も定期的に勤務が回ってきます。さらに当直や夜勤など24時間の勤務が課されることがほとんどで、研修に出席するための日程調整は難しい状態です。
突発的な対応が多い
勤務体系が複雑な上に、患者さんや医療スタッフの状態に応じて突発的にシフトが入ってきたり、時間外勤務が発生したりすることがしばしば生じます。結果として予定していた研修会に参加できなくなることがあります。
評価やキャリアに直結しない
自身やチームのレベルアップのための研修、特に専門領域以外の研修への参加が受講者の評価やキャリアに影響されにくいことも医療従事者の特徴でしょう。
専門知識を優先させなければならない
一般企業の場合、研修は業務時間内に行われることがほとんどです。しかし、医療業界において勤務中の研修は非常に稀で、多くの場合業務後か休日に行われます。また、研修は自己研鑽に含められ、職場からの支援も十分ではないことが多いため、学びたい人にとっては厳しい環境といえます。
職種(資格)の壁が存在する
医療は免許によって役割がはっきりしています。そのため、医療の専門領域に関する研鑽は医療職ごとに縦割りになりがちです。このマインドセットが専門領域以外にも影響していることがあります。例えばリーダーシップの発揮の仕方、部下のエンパワーメント、チームビルディングなど、職種横断的に学ぶべき内容の研修を多職種で実施することを難しく感じることはないでしょうか?
論文数や学術的な業績がものをいうキャリアパス
多くの組織では学術論文の数や研究業績によって人事配置が決まっている現状があります。たしかにそうした側面も重要です。しかし、組織を運営したり部下の成長を支援したりするためには、それ専用の知識やスキルも必要です。こうしたキャリアパスに対する問題に当社は向き合いたいと考えています。
優先順位が低い
医療従事者は人と接する機会が多いため人間関係の構築に長けていると思いがちです。しかし、我々の受けた教育やトレーニングを振り返ると、こうした知識や技術の習得の機会は少ないことに気づきます。なぜなのでしょうか?
患者さんを優先させなければならない
医療者は自分自身の成長よりも目の前の患者さんの健康や命を優先させなければならない使命があります。その結果、有事の際には予定されている研修を欠席または中座しなければなりません。言い換えれば、自身の成長に貪欲になりにくい環境だといえるでしょう。
国家資格保有者の集団である
患者さんは多くの場合、国家資格を持った医療従事者を頼って来院(来店)されるわけです。患者さんの期待に応えるために、まずはご自身の専門領域を磨くことは自然なことです。結果として、専門領域以外を学ぶ機会の優先順位が下がることになると思います。
環境の良さを自身の強みと思いがち
医療現場は安全面の観点から他の業界と比べると指示系統や、職場のインフラが充実している傾向にあります。そのため業務上、意見の食い違いやぶつかり合いは少ないかもしれません。しかし、このようなシステムが無かったり、不備が生じたりした場合、指示の伝達、情報共有、コミュニケーションはうまくいくでしょうか。
通常のお客さんと「患者さん」ではマイドセットが違う
患者さんは多くの場合、国家資格を持った医療従事者を頼って来院(来店)されるわけです。患者さんの期待に応えるために、まずはご自身の専門領域を磨くことは自然なことです。結果として、専門領域以外を学ぶ機会の優先順位が下がることになると思います。
3.当社の取り組み
こうした医療業界特有の難所がありながらもそれに柔軟に対応し、より良い人材育成をしなければなりません。当社の講師は医療現場出身という特徴を活かし、貴院、貴科、貴部署の課題解決のためお話し合いを持ちながら研修会等を考案し、人材開発のお手伝いをさせていただきます。